実務翻訳の市場
一口の翻訳の仕事と言っても、実にいろいろな種類の翻訳があります。
出版翻訳と呼ばれるものがその一つです。
それ以外にも実務翻訳と呼ばれる翻訳があります。
ここではその実務翻訳について紹介していきます。
実務翻訳の場合、出版翻訳やメディア翻訳等と言った別のケースの翻訳とは異なり、翻訳者の名前が表に出ることはまずありません。
実務翻訳の場合、実際に翻訳に携わる人はどこまでも名前を出さない匿名の黒子です。
従って実務翻訳は一見すると地味な仕事のように見えますが、実際のところ実務翻訳は翻訳業界における仕事量全体の、実に8割から9割を占めています。
こうして見ると実務翻訳では翻訳者の名前が出たり、翻訳者がスポットライトを浴びたりすることはなく、表面的な華やかさはありません。
その代わり実務翻訳の市場、パイは大きく、社会に置いておう盛な産業活動、文化活動等が続く限り、まして地球規模でそれらが拡大していく限り、決して需要が尽きることがない堅実な分野でもあります。
専門家の見立てによればその市場は1兆円もの規模に上るともされています。
そんな大きな規模が見込まれる実務翻訳の市場ポテンシャルに対応すべく、実務翻訳の世界では常に新しい力を求めていて、出版翻訳等と比べた場合、この実務翻訳でしたら新人にとっても敷居が低く、比較的入りやすい領域と言えるでしょう。
実務翻訳と産業界
一方で実務翻訳はビジネスや産業界の情勢に密接に関わっています。
例えば国内外の経済情勢や技術革新等、そういったビジネスや産業界の動向に敏感に反応し、時として需要のありかが大きく移動するのも実務翻訳の世界の特色だと言えます。
実務翻訳の需要がある分野には実に様々あり、例えば医療、法律・特許といった分野においては、翻訳のニーズはおしなべて安定していると言えますが、技術革新の早い分野、例えばコンピュータの世界ではこの数年、ハード関連からソフト関連へと、翻訳の需要の軸が変化していると言います。
とある大手翻訳会社によれば、実務翻訳の分野の最近の動向について言えば、例えば最近実務翻訳の引き合いの多い通信関係の翻訳の場合、携帯電話やモバイル等の移動体通信が急激に伸びてきているということです。
また同じく実務翻訳の主な顧客であるIT 関連の企業の場合、ERP という企業用の統合業務パッケージに関する需要が目立ってきているということです。
ここで言うERP(Enterprise Resource Planning)とは、受注・販売管理、在庫管理、生産管理、会計業務等、企業の基幹業務システムを一括サポートするソフトのことを言います。
最近はこうしたソフトを導入する企業が急激に増えているということは容易に理解できます。
また移動体通信を中心とする通信関連、及びERP 等の IT ソフト関連の需要が高いのは、ここで取り上げた大手翻訳会社のみならず、最近の実務翻訳の業界全般に共通した傾向だと言えます。
こうして見ると、この流れは今後当分続くと見られています。
逆に言えば、もし翻訳者がこうした分野に通じていれば、引き合いが多く、当分は仕事に困らない、と言えるかもしれません。